福山 えみ 写真展「月がついてくる」

2010年12月1日(水)〜24日(金) 作家略歴     写真集

Gelatin sivler prints, 11x14inches, edition of 15, with Emi Fukuyama's signature and edition notations

       
       
       
       
       
       
       
   
       
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幼い頃、夜になると眠ることが怖くて毎晩のように両親の枕元 に座っていた。
意識がなくなることによって自分や周りのものの存在が消えてしまうことに強い恐怖心を抱いていたからだと思う。
自分から二人を起こすわけでもなく、暗い部屋の中でただ静かに座って二人の寝息を聞きながら、気付いてもらえるまで待っていた。

今となっては、枕元に座った私に気付いて一緒の布団に入れてもらった時の安心感よりも、悶々と一人きりで暗闇の中に座っていた時の記憶の方が強く心に残っている。

眠ることによって存在が消えてしまうかもしれないという恐怖心と他者に気付かれることによって存在を実感できる現実感。
どちらにも行動を移せずに悶々と座り込んでいたその狭間の時間の中で、私は自分自身の存在と他者の存在を強く感じていて、そして勝手にとても厳かな気持ちになり、怖いながらも安心感をも感じていたように思う。

それは今、とても惹かれる光景に出会って写真を撮る時の意識にも繋がっている。

相手に気付かれることなく、相手の領域に入り込むことなく相手と私との間の境界を感じながら息を殺してただその光景を見つめたい。

シャッターを切る時は自分や他者の存在の尊さを感じることができる唯一の瞬間、と言い切ってしまうのは言いすぎのような気もするが、ただ何となく生活をしている毎日の中では感じることができない瞬間である、と言うことはできる。
今、私にとって写真を撮ることは自分や他者の存在について考えたり感じたりできる確かに大切な時間であるのだ。

福山 えみ


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