PHOTOGRAPHER HAL 写真展「Couple Jam」

2009年8月4日(火)〜29日(土) 作家略歴     オリジナルプリント 写真集


Inkjet prints, A0(841x1189mm) edition of 8, A1(594x841mm) edition of 11, A3+@(328x453mm) edition of 20, with PHOTOGRAPHER HAL's signature and edition notations                                  

 
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私は日々広告の写真を撮影する事で生活をしている。
時間という制約の中、自分の被写体を夜に求めるようになった。
ライブハウスやクラブイベントなどに出没しては目に飛び込んでくるものを何でも撮っていた。
ネオン、壁、ソファー、花、人。中でも人間に目が向く事が多い。盛り場での主役は人間だと思う。
水槽にいる熱帯魚を眺めるように盛り場にいる人たちを観察してみると、
ぎ らぎらぬるぬるぴかぴかざらざら感が私の皮膚に伝わってくる。化粧を施した顔や服やセットアップした髪型などが目に飛び込んできた。外見は着飾っているが 表情は仮面のようだ。どこか皆、身構えている。ところが、カップルになるとそれぞれの表情が生き生きとし始める。個性を感じ、愛を感じ取る事が出来た。
そこが面白いと思った。

私はカップルを被写体にすることにした。夜の盛り場、新宿の歌舞伎町や渋谷などにある、ナイトクラブ、バーなどのアンダーグラウンドシーンを彷徨った。
そうして被写体を探し、撮影の交渉をした。
被 写体になってくれたカップル達はミュージシャン、ダンサー、ストリッパー、労働者、飲食業経営者、OLやサラリーマン、住所不定無職者など様々だ。カップ ル達は見知らぬカメラマンに声をかけられた事を楽しんでいるようにも感じた。話をするうちにカップルの多くはカメラマンである私に心を開いてくれた。
そして撮影するのである。

1st 写真集「Pinky & Killer」、2nd写真集「Pinky & Killer DX」で撮影していたシリーズでは、そうやって出逢った人たちとほとんどの場合、後日に撮影していた。というのもライブハウスなどは暗かったり、過剰なま でに光で雰囲気作りをしているところが多く、背景自体は汚れていたり地味なところが多かったからである。
その日は、カップルの印象を持ち帰り撮影現場や関係性をイメージした。その後、連絡を取り合い、撮影に臨むことにしたのだ。私とカップルとの関係をより深めて撮影をしたかったからである。
関係性を深めた結果、2人にとって最も似合う場所が他にあるはずだと思った。
そういうわけで2nd写真集「Pinky & Killer DX」での撮影場所の多くは被写体の部屋やラブホテルになったのである。
密着した二人には密室が似合うのである。
撮影するとき、私は被写体にこの撮影はプリクラのようなものだと説明した。
つまりカメラに向かって自分達をアピールしてほしいということである。
撮 影は楽しくハッピーなひとときであった。何組かのカップルは撮影後、結婚した。その一方で待ち合わせに来なかったカップルもいた。なかには別れてしまった ため写真を使ってほしくないと言われた事もあった。また、撮影後しばらくして刑務所に入ってしまい、その後の写真使用許可のサインをもらうのに大変な思い をしたことも有った。
老若男女, 男と男, 女と女などカップルにはいろいろな有り様が有る事も知った。
そして十人十色の関係性が垣間見えた。そこが面白いと思った。

カメラを持ち込み、私が加わることで私の作品性が存在し意義ある事に気付き、思いが膨らんだ。
ある時私は、カップルの愛を最高に密着させる為の装置に気付いた。それがバスタブである。
私はカップル達の家にカメラを持ち込んだ。
そして、バスタブでカップルを撮影することにした。カップルにとってバスルームは家の中で最もプライベートな場所であることを知った。ベッドルームやトイレ以上だ。非常に恥ずかしがるカップルが多かった。
そんなカップルを説得した上でバスタブの底に押し込めた。それはある意味暴力的でもあり一種の拘束プレイのようだった。
しかし結束を強くすればするほどそれが二人の絆を表してきた。
そして磁石のように引かれ合うカップルは、バスタブというプリクラボックスで自分たちをアピールし始める。
そしてバスタブというる壺の中で、一つに溶けてゆく。
まさに母親の中にいる胎児同然の姿でバスタブの中に二人が納まっていた。
そしてカップルはバスタブの中で撮影されるうちに煮詰めたジャムのように愛が凝縮されてゆく。
それが"Couple Jam"なのである。

PHOTOGRAPHER HAL


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