「池河内湿原」は福井県敦賀市街地から、北東に5キロメートルの標高300メートルの三方が山に囲まれたところにある。
1990年5月の新聞記事で、この湿原に興味を餅、6月3日に初めて訪れた。湿原の広い眺めに感動し、木道を歩いて蜘蛛の巣に付いた水玉の美しさや、山野草が沢山咲いていたことが、今も印象に残っている。
池河内湿原に入る手前に小さな峠があり、この杉林を過ぎると別世界が広がる。冬は田んぼや湿原一面に、雪に覆われて静寂の世界が、春は朝靄がたなびき、柿の 若葉が光る、夏は澄み切った青空と緑の水田に風が渡り、秋の紅葉がはじまり、湿原も黄金色に輝いて、最もにぎやかな時を迎える。
湿原の東側には集落があ る、家の近くには畑には、季節の野菜が育ち、花が咲いている。晩秋には家屋の外周を菰で保護する、雪囲いが取り付けられる。冬は市街地に比べ積雪が多く、 屋根雪降しが大変な作業になっている。
近年の人口の減少と、高齢化が急速に進み、2004年にはすべての水田の、耕作ができなくなった。休耕田になると1年目で雑草が生え、2年3年経てばススキが根を下し、やがてハンノキなどが茂り、あたりの景観は激変してしまった。廃屋は解体され更地になり、分校も取り壊されて広場になってしまった。しかし、ここの人達の優しい気持ちは、以前から変わっていない。これからも湿原や集落が、どのような変遷を辿るか視続けて行きたい。
(著者あとがきより) |