この写真集のタイトルであるtraversとは、「横切る、ジグザグに進む」という意味がある。
写真集の構成も、生まれ故郷の米沢と現在暮らす東京を起点に、ニューヨーク、パリ、インドネシア、マレーシア、ハワイ、フィリピン、バリ、モンゴル、中国、台北をtraversした旅の記憶となっている。
つまり、外国を旅しては、米沢・東京に帰ってくることのくり返しのなかで、わたしは一体どこに位置するかを確認しているのだ。
旅とは、別の表現をすれば、わたしの発見であったり、再確認であったりする。
渡部の写真が、記憶であるという所以は、旅への思いが抑制された形で現われているからだ。
写真集からは、どこへ行っても思いをこめた旅であることが分かる。
それは、気に入った対象を切りとってくるというよりは、対象に寄り添っていこうという姿勢があるからなのだろう。 |