トオヌップとは、アイヌ語で「湖のある丘原」のことである。
岩手県遠野は、このトオヌップに由来するという。
つまり、遥か昔からこの地に人が住み続けてきたということである。
別のいいかたをすれば、暮らしやすかったということである。
小栗昌子は、かつてこの地を旅したとき、この地の人びとの間には、巷間伝えられる「民話の里」とはちがう、風土への共感とそこに生きることの矜持があることに気づき、移住を決意したのである。
そして、遠野に移住して10数年のなかで、この写真集は生まれた。写真の制作は、この地に暮らす人びとの生のうちに、縄文を思わせる古層を垣間みたのが発端となっている。
その方法論となったのは、現に遠野に暮らす人びとと風土のなかにカガヤキを見出すことであった。 |