本書は、写真家が1983年から2008年にかけて訪れた沖縄諸島16の島の写真から構成されている。
写真家が沖縄を訪れたのは学生時代のことだが、そのとき以来、短い旅をいくどとなくつづけ、そこからあくまで自分が気に入った写真として少しずつ蓄えてきた。
しかしその旅は、明確な予定もなくされてきたものだが、のちに写真家は、「何か見えない力に導かれているように感じていた」(本書あとがき)とその旅を確認している。
こうして写真家が、沖縄に魅かれて旅をつづけたこたえが本書となったのだが、そこには、本土とはちがう時間が流れていた。
沖縄には、いまも島々に独自の文化、風習が残されている。それが冲縄諸島の魅力で、これまでいくたの写真家が沖縄をとり続けている。
そのようななかで山下の視線は、ことさら沖縄らしさをとらえることにとどまるものでもなく、かつまた、取材者として興味のおもむくまま撮影するでもなく、ゆるやかに推移している時間を追っていったと思われる。 |