「花泥棒」

細江 英公
Eikoh HOSOE

2009年11月発行
1,800円+税
上製本/写真32点
サイズ  198x264x11mm

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 1966年春、妻の姉の写真家・今井壽惠が親しくしていた鴨居羊子さんを紹介された。鴨居さんはすでに下着デザイナーとして有名だっ た。そ の鴨居さんが大阪からやって来て、小さなぬいぐるみ人形をどさっと私の前に置いて「英公さんにおまかせします」といって帰っていった。

 よく見る と可憐な少女や好色おやじや色っぽい中年女性や妊娠中の女などなど、人形というよりさまざまな人間を集めてつれてきたという感じだった。はっと気がついた ら、ぼくがその頃よく出入りしていた唐十郎の状況劇場、赤テントの役者集団みたいだった。唐十郎もいる、李麗仙もいる、麿赤兒もいる。

 ぼくは小さな役者たちをつれて旅に出た。遠くは青森、長野、近くは晴海埠頭に四谷界隈。みんなそれぞれ勝手気ままのやり放題、ちょっと目を離していると セックスをはじめるわ、裸でテレビに出たいと駄々をこねるわ、親の心子知らず。あまりにうるさいので叱ったら「死ぬ」と言って電車の線路を枕にして自殺未 遂、これは仏さまにすがる他に道はないと思って野仏行脚をしたりしてなんとかなだめて帰ってきた。僕は疲労困憊、さっそく鴨居さんにお引き取り頂いた。

 あれから43年、幸運の知らせが舞い込んだ。かつて僕が33歳の時に撮影した人形の数々が、今になって写真絵本「花泥棒」として世に出ることになった。先 ず一番に天国で暮らしている鴨居羊子さんと今井壽惠さんに早速知らせて上げよう。これは天国のお二人への贈りものだ。

(著者あとがきより)

   
他社刊行物

    

「死の灰」

   

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