「パリ エッフェル塔」

榎本 聖一
Seiichi ENOMOTO

2014年2月発行
2,800円+税
上製本/写真65点
サイズ  207×233×13mm

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約40年前、初めてパリを訪れて以来、頻繁にこの街に滞在した。人々の行き交う街路や広場、セーヌ河畔を彷徨して私を魅了する様々な光景にしばしば出合った。その時々に、樹木や建物の彼方に垣間見える高さ300メートルの鉄塔は私を強く惹きつけて止まなかった。特に、セーヌ河や舗道の水溜りの水面やショー・ウインドーのガラスに映るエッフェル塔の映像の美しさに見とれて時の経つのも忘れた。 エッフェル塔は、フランス革命100周年を記念して開催された1889年のパリ万国博覧会に初めてその威容を現した。当時、シャン・ド・マルスの会場を訪れた数多くの訪問客をエレベーターで上空に運び、かつて誰もが体験したことのない高みから、歴史が幾層にも交差するパリの眺望を四方から思う存分堪能させた。 大衆の間で熱狂的な支持を得たが、一部の芸術家・知識人は無用にして醜悪な塔で黒々とした巨大な工場の煙突だとか醜い骸骨だと酷評し喧々諤々たる議論を引き起こした。しかし、今ではパリの風景に無くてはならない存在になっており、パリさらにフランスの象徴としてのモニュマンの一つに数えられている。 その建設に当たり、技師ギュスターヴ・エッフェルは、フランス国内や世界各地での鉄橋の設計・施工で培った豊かな経験を生かした。合理的で緻密な計算に基づき、18,036個の鉄骨部材を使用し、250万本のリベットを打って組み上げ、最も重要な風圧の問題を解決して塔に十分な抵抗力を与えた。その結果、エッフェル塔に絶妙なバランスを備えた安定性と優美であり力強い独創的な造形美を生み出した。 エッフェル塔の写っている一連の写真が、塔への私の深い愛情の表出であり、さらに塔と私との間の親密な交感の結晶としての作品となっていることを願うばかりである。

榎本 聖一

 

  

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