本書は、写真家の追い求める4つの心象を構成して出来上がったものである。
その4つは、それぞれが独自の響きを持ちつつも、全体として共鳴しあって一つの楽曲となってこの写真集になっている。
写真家の心象とは、イメージでいくら描いてもできない想念のとらえがたさであったり、みずからのルーツは遥かな時間のなかにあることの確認であったり、私という存在の不分明さであったり、なくなった知人を回想するなかで出会った自然との関係性が見えてくることであった。
ひとことでいえば、写真家がとらえようとしてとらえがたい心象をこの時点で構成し、ひとつのこたえとしたのがこの写真集といえるだろう。
この写真集の撮影場所が、南インド、ハワイ、大阪,沖縄、奄美、東京、神奈川,台湾、バリ、福井であることは,格別な意味があるとも、あるいはそうでないともいえるものである。
写真家にとって初めそこが選ばれたのは必然であっても,最終的には、そうしたことは後景に退くような構成の結果となっている。
写真家にとって、とらえがたい心象を表現していくには、それは必要な方法だった。 |