「あの日に続く時間 2011.3.11」
高橋 親夫
Chikao TAKAHASHI
2015年11月発行
3,500円+税
上製本/カラー写真73点
サイズ 236x207x15mm / 590g
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震災後まもなくひとり私は、海岸線を歩き続けた。果てしなく続いている壊滅した光景に「人は許されてこの地上に生きているのかもしれない」と思った。
人工物がことごとく破壊し尽くされていたからである。その広大さと量に、復興するのは十年以上先になるだろうと私は感じた。津波は数百年歴史を重ねてきた私たちの生活圏を目の前から奪い去った。
絶望的な状況の中で捜索が始まり、ガレキが撤去され、被災者への支援が始まった。支援は近隣からだけではない。日本全国の人々や海外からの長期にわたる物的人的支援が続いた。全国の地名が入った作業衣やナンバープレートをつけた人材と車両、資材が集結し、日の出から日没まで、休日返上で作業する姿が今もある。
元旦の朝にたくさんの人々が薄暗い寒冷の浜辺に立ち、海に向かって並び、静かに日の出を待っている姿があった。海からやってきた災害で、あれほどひどい目にあって日はまだ浅いというのに、人々は渚まで近づき、海に向かいこれから始まる未来への幸せや願いを託そうとしている。私は「人間はなんて強いのだろう」と思った。
この写真集は、被災した地域に住む者として撮影を重ねながら、人間と自然との関わりについて考え、思いを巡らせた自分との対話である。京都造形芸術大学の卒業制作を機に、大学の先生、冬青社及び関係者の皆様の力添えを戴き完成し、世に出版が出来たことに感謝したい。
(著者あとがきより抜粋)
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