−展示案内−
樹木など殆ど無いような、都会の片隅で幼少期を過ごした。
それにも関わらず植物を常に身近に感じていられたのは、
家の壁に祖父の描いた花鳥風月を題材とした日本画が掛けられていたからだろう。
そしていつしか私自身、花の絵を描き始めた。
祖父の画は朝顔など日本の季節の草花だったが、子どもの頃の自分が描いたのは想像上の花々だった。
クレヨンで描かれた絵はごく拙いものだったが、"空想のお花" と名付けて喜んでいた。
花のお絵描きに没頭していたその時間は、至福の時だった事を思い出す。
そしてクレヨンがカメラになり、暗室作業などするようになった今も、相変わらず花や葉に向き合っている。
植物と語らっていると、いつもとは違う別の自分が顔を出す。
未知なる自分との対話の結果を作品にしてみた。
無邪気な子ども時代はとうに過ぎ去ったが、今も幼き日の続きをしているのかもしれない、と時折思う。
大山葉子
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