若林勇人写真展

スタンダード

2019年3月1日(金) -30日(土)

作家略歴


ピグメントプリント


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「スタンダード」

「ペットとは無縁だと思っていた、きれい好きな友人が突然猫を飼い始めた。猫の種類を聞いてもまるで聞いたことがないものだった。野良猫は毛が短くて、高級な猫は毛が長いくらいしかの認識しかなかった。
そもそも猫に関心はなかったが彼が熱心に話しているのを聞いていると興味が湧いてきた。

彼がキャットショーに猫をだすというので一緒についていく。アレルギーなのか会場に入ると鼻水と目の周りのかゆみが止まらない。
会場にはたくさんの猫がいて、順番が呼ばれるとケージから出され審査台に運ばれる。
しっぽを撫でられたり、頭の形を手で触り確認されたり、猫じゃらしで遊んでいる。行われていることの意味がまるでわからないし、どの猫も十分に美しいように思われた。

キャットショーはスタンダードいう理想によって審査される。スタンダードとは、ある生きている猫を描写しているのではなく、決して到達できないような理想が言葉で書かれている。その言葉の解釈によってブリーダーは猫を繁殖する。つまりはスタンダードという正しさに向かってキャットショーは進行していく。

動物は自然のうちにあると当然のように考えていた。しかし自然であるとはどのようなことなのか、本来のあるがままの姿が自然なのか、あるがままの姿とはそもそもどの時点でのことなのか。自然であることとそうではないもの境界は曖昧で明確な線引をすることはできないように思えてくる。

いつの間にか手芸店や釣具屋に出かけては猫の撮影時に気を引くための猫じゃらしを自作するようになっていた。
 



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