こうみょう《光明》〜 “ NOVA“
こうみょう《光明》とは、希望、仏・菩薩から発する慈悲や智慧を象徴する光。
あらゆる人を救い、あらゆる願いをかなえてくれるといわれる観音。
江古田にある日本大学芸術学部の映画学科に友人が在籍していた頃、よく暗室を借りに行っていた。
私も同大學の他の学部にいたが、登山に明け暮れていたため、8年間を費やしたが1単位を残し卒業出来なかった。
予てから写真という表現方法を模索している時、江古田にある渡部さとる氏のWORKSHOPに参加する機会に恵まれた。
WSの卒展製作の過程でオルタナティブ・プロセス(古典技法)に出会い、写真表現であるゼラチンシルバープリントから過去に遡って、プラチナ・パラジュウムプリント、そして湿版写真(Wet-collodion process)に出会った。
石仏たちは表層化された写真には、一見すると無機質なものに見える。
しかし、長い年月、祈りを込められ歳月を経た石仏たちは、私たちに何かを訴えかけてくれていると感じる。
石仏は自然の風化によりいつかは朽ちていく。
石工の祈り、それらを守りぬいてきた人々の祈り、様々な人々の祈り、その魂を写真という表現法で可視化したいと思った。
私が石仏と対峙した時、湿版という感度の低さとグレーの階調が、歳月を経た石仏たちには最も相応しいと表現方法だと感じる。
私はポートレートを撮る時のように、石仏たちに語り掛け、そして自分自身にも問いかけながらシャッターを押しつづけた。
“ NOVA“ とは、フランス語で新しい星という。
青春時代の江古田、還暦過ぎてからの江古田の町、昭和の面影と新しい時代を思わせる景色が混在する町、その「変化」を視覚化するために、湿版(ティンタイプ)の技法を持ち入り製作した。
移動暗室による湿版撮影と並行してデシタルとアナログのハイブリットな方法を模索している中で、杉野信先生のティンタイプによる表現方法に行き着いた。
デジタルプリントとティンタイプ、そこには江古田の町が沈んだトーンで描かれている。
静かに新たな町へと変革していくのか、それとも孤高を保っていくのか ?
一見、相反するように見える二つのテーマだが、石仏の姿に重なって見えるのは私だけなのだろうか !!
星野 寿一 |