濱田トモミ  写真展

変生−TRANSFIGURATION

2017年5月6日(土) - 5月27日(土)

作家略歴
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 海沿いの町小樽で、雨にさらされ、潮風に吹かれながら、何十年も変化していく、トタン。
その色や質感は、人が意図的に作ることができるものではなく、だからこそ複雑に美しい。
その姿を見つめ、その表面にふれ、「ただ、そこにあり続けた」トタンが経てきた長い時間、そして、それと共にあった人々の暮らしを想像しながらシャッターを切る写真家、濱田トモミ。
その視線は、「もの」の美しい変化の中に年月の長さを写し出し、さらにはそこに内在する「ひと」のしなやかな営みを想起させる。

ギャラリー冬青 


作家によるステートメント

 北海道の建物は、トタン屋根がほとんどだ。外壁などにもトタンが使用されている。 私の生家はこの地でトタン屋根と外壁の施工業を営んできたので、子どものころから資材として無垢のトタンを目にしていた。新品のトタンはコイル状や一枚の大きな板状で滑らかな肌触りをし、銀、赤、青などのきれいな色をしている。
 小樽の街を訪れたとき、建てられてから40年間一度も張り替えられていないというトタン壁と出会った。それは、瑕つき、錆び、変色し、剥がれた状態で存在している。 子どものころから見慣れている新品のトタンとの余りの違いに目をうばわれた。私は無垢なトタンが、歳月を経て劇的に変化していることに美しさと静かな感動をおぼえた。
 古びて朽ち果てようとしているトタン壁には自然条件による劣化だけではなく、壁の内側で暮らす人々の営みという時間の流れが存在している。人生という歳月には、よろこびだけではなく苦しみや困難も混在する。それに耐え乗りこえた先に、生きた証しはあるのではないだろうか。
 トタン壁の変化は、別の姿に変わっても存在する「変生(へんせい)」なのだと思った。 私にはトタン壁の変生は人生そのものに見えて美しいと感じ、生きる希望もそこから見出すことができた。

濱田トモミ 


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