村越としや 写真展

雷鳴が陽炎を断つ

2016年11月4日(金) -26日(土)

作家略歴


ゼラチンシルバープリント(作家サイン入り)


   
   

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2009年1月、年明け早々にそれまで元気だった祖母が入院した。
余命は3ヵ月と宣告された。
とても大好きだった祖母が死ぬと知らされたとき、僕は出来るだけ実家に帰り少しでも写真に残そうと思った。
時間を作って実家に通ったけど、会いに行くたびに痩せて弱っていくその姿にカメラを向けることは殆ど出来なかった。
季節が冬から春に変わるころ、死の宣告通り祖母は他界した、それからお葬式、四十九日、お盆があっという間に過ぎて、実家は日常を取り戻した。
僕は祖母がいなくなってからも、地元の風景に刻まれた祖母との思い出を少しでも集めるように実家の周辺を歩き、撮り続けた、そして2009年12月31日で撮ることに区切りをつけた。
写真の整理を始めると、少しだけ残った祖母の写真からよりも、見慣れた実家周辺を撮った写真から祖母の存在を強く感じた。
きっとこの先も祖母のことを忘れることはないだろう、でも人間の記憶は残酷で細部は少しずつ薄れていく、それでも 祖母を思い、歩き、撮影した故郷の小さな風景とその写真を見るたびに、祖母との思い出は美しい記憶となって、再び僕の中に蘇ってくる。
このことが僕に家族や故郷の風景がかけがえのないものだと教えてくれた、そして僕が故郷の風景へと向かう出発点になっている。

今回展示される作品は、2009年に祖母の死を経験したことで、地元の風景を撮ることと家族との思い出がリンクするようになった時期に撮影された作品で、『雪を見ていた』(2010年刊)『土の匂いと』(2011年刊)『木立を抜けて』(2013年刊)に続くシリーズとして纏められます。
新作と並行して過去に撮影した作品の発表しながら、決して切り離すことができない様々な時間軸と向き合っています。


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