若林 勇人 写真展

海辺にて

2016年9月30日(金) - 10月29日(土)

作家略歴


Cプリント(作家サイン入り)


  

  

  


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梅雨も明けたので少し時期は早かったが初夏の海にでかけた。海の家は大方今シーズンの準備が終わり、
平日だからか店先では店員が暇そうに座っていた。時間も早いせいかまだ監視台の上に誰も人は乗って
いないし、海岸には数えるほどしか人の姿は見えなかった。

 居酒屋の壁にはビールジョッキを持った女性のポスターがいつもこちらに向かって笑いかけ、
グラビアアイドルは年中水着で海辺に横たわっている。青春ドラマでは若者たちが逆光気味の海岸を
走りぬけ、判ってもらえなった少年は海まで逃げて行く。サスペンスドラマでは追い詰められた犯人は
海に突き出した崖の上で自白する。このような海に対する様々なイメージは私の日常のいたるところで
入り込んでいる。過去の作品撮影で荒れ狂う冬の日本海や台風が上陸した沖縄の海などには度々行って
いたが私は思いつく限り夏の海水浴に行ったことがなかった。

 日の出とともに海に着くよう時間を見つけては私は海に行った。日が昇り始めると照りつける太陽は
砂を焼き、ビーチサンダルの隙間から入り込む砂は耐え難く熱い。湿度を含んだ磯の香りは私には
とても心地よいとは思えなかった。泳いでいるよりもほとんど海に人が浮かんでいるだけにように見え、
砂浜ではパラソルで日を避けて寝転んでいる人が多かった。時折ライフセーバーが猛烈なスピードで
沖へサーフボードに乗って向かっていくのが見えた。潮位の影響からなのか海から上がるよう放送が
流れ、遊泳禁止の赤い旗があげられることもあった。広大な海に対して遊泳区域はあまりにも狭いように
思えたが、人間が管理できる狭い範囲故に、改めて海はままならない自然であることを認識6させられた。

 夏になるたび各地の海に通っているうちに、気が付くと3年が過ぎていた。 

 


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