写真作品集『壁』出版記念

神田 開主  写真展



2016年8月5日(金) -27日(土)

作家略歴  作家HP


ゼラチンシルバープリント・アーカイバルピグメントプリント(作家サイン入り)











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心細いまでの人の気配を辿っていった先に現れる白い壁の姿は偉容であり、例えようのないくらい異質である。
壁の上に立ち境界のみをじっと見つめていくと、ダムという場所ができたことで生まれる特異な光景が立ち現れてくる。
きっかけは水面の底に沈む古い生活の残滓を目の当たりにしたある夏のことだった。
真夏の炎天下に立ち上る水蒸気によって揺れる景色は、かつて水底へと沈んだ村々の名残すら露わにするようで、様々なものが再び浮上してくるような感覚は、水面という名の結界が少しずつ解れていき、過ぎ去った景色を呼び戻す蜃気楼となって揺らめき立っているようでもあった。

干上がった湖岸を踏みしめ、水の底へと沈む村を歩き廻り、浮上してきた過去の名残を垣間みて、いつしかこの場所をつくりだす水と壁の存在に惹かれるようになっていった。

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コンクリート製の壁面の袂には静かで果てしない世界が広がっていた。
そこでは流れる時間がどこかゆったりとしたものに感じられ、井戸の底を覗き込むような静けさと、仄暗い水の底から滲み出ては消えていく気配が、そこへの興味をより一層濃いものへとしてゆく。
満々とゆらめく水面は複雑に反射し、時折その中に息づき眠るものが雲のように漂い出ては流れ去っていく。
その様は重力の支配から解放されたどこか別の空間か、明と暗のコントラストに照らし出された舞台の上の出来事のようにも感じられる。
自然と人間、それぞれがつくりだす対照的な光景に惹き付けられながら、ダムという場所がもつ不可思議な成り立ちへのアプローチを続けている。

神田開主


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