Jon Erwin Staeheli 写真展「 迷宮 WANDERING

2015年7月31日(金)〜8月29日(土) 作家略歴 

後援 スイス大使館


ゼラチン・シルバー・プリント(作家サイン入り)

 
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霧を通り抜けると目の前に未知の世界が広がる。
差し込む光を受け、濡れた木々がきらきらと輝く神秘の光景。
まるで異世界と我々の住む世界の狭間にいるようだ。

不意に我々の世界が楽園の様に思える。 –––– 居心地がよく、守られている安心感。

これこそ私達が求めている感覚だ。我が家に帰りたいと願っている。
しかし、雨の中、霧の中ここに立ち、ずぶ濡れになり凍えている。

風景は我々人間の手により、我々の都合で美化されているが、雨・霧・黄昏時の微光こそ風景を形創る新しい自然の振付だと感じる。この振付は美しく、驚きに満ちている。たとえそれが脅威であっても。 風景を人為的に形成する目的は何か、自然の振付は我々に疑問を抱かせ、全く新しい意識を芽生えさせる。

束縛より自由
支配よりあるがままの自然
秩序より無計画
美学より自然の美

森や自然の中にいると、時々演劇を観ている放浪者の気分になる。もちろんこの自然の演劇は私の為に上演されている訳ではない。それは自然に起こっている偶然の賜物であり、私が好もうが無関心であろうが、その演劇は私の周りで起こっている。

私の妄想・想像がこの演劇に加わっているのかもしれないが––––

一方で、もしかしたら日常事に意識が引き戻され、私の周りで起こっている自然の現象を何も感じていない、見ていない、気づいていないのかもしれない。家に帰って後々、回想にふけりおぼろげな記憶の中で見落としていたものに気付く。

この世界において、私一個人の存在は壮大な計画のほんの一部にすぎない、と気付き安堵する。
同時に私の周りの自然が成長し始め、現実になり、美しくなり、自立する。
自然を守ろうとする責任感を私はようやく手放すことができる。私はただ尊敬するだけでいいのだ。ノアの洪水を生き残ってきた自然は、私にその不思議を教えてくれる。
これは新しい意識だろうか?私が気付いていなかっただけだろうか。

自然の印象は儚く、夢の世界に生きることは出来ないが、時々異世界の光やその悦びを味わうのも良い。ほんの束の間、日常から離れ自然の迷宮を探索しに出かける必要が、私にはある。


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