Michelle Given 写真展  "The Distance From Oneself"(自分自身との隔たり)

2010年8月4日(水)〜31日(火) 作家略歴 

19x60inches, edition of 5, inkjet print, 6x26inches, edition of 5, with Mechelle Given's signature and edition notations                                      


       

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"The Distance From Oneself”(「自分自身との隔たり」)

隔たりとは何か。自分と自分自身との隔たり、自分の周囲との隔たり、他の人々との隔たりとは。アーティストとして私は、事物の間に介在する隔たりに関心が ある。この隔たりを明らかにしたい。The Distance From Oneself(「自分自身との隔たり」)は、 ピンホール写真にデジタル画像制作を織り交ぜたプロジェクトである。私達は人間として、物理的世界からある一定の距離、隔たりをおいて生きているが、これ はこの事に焦点を当てたプロジェクトである。我々の身体が特定の場所や時間の内にある間も、心は自由にその場から離れ、時空間、前後左右どこへでもさまよ い出ることができる。そこで次のような問題に私は興味を抱く。写真とは、そこに写されているものが現在または未来に関する場合でも、なつかしさや隔たりの 感を表し得るものなのか。写真は、人が感じる自分自身との隔たりについて語ることができるのか。人が物理的現実としてそこにいる場と、本当はそこにいられ たらと思う場の間にある隔たりについて語ることができるのか。人は生涯のうちどれくらい第三者として生きるものなのか、自分の今を偽りながら。今に対し て、更には未来に対してさえ懐旧の念を起こすことは可能か。この作品は不確定性と人間的条件をヴィジュアルに探求し、心理的体験と身体的体験との乖離を描 きだしている。

多くの写真家がノスタルジアという問題に取り組んでいるが、彼等はそれを過ぎ去った時と場への回帰願望として、またそれらの真髄を捉えたいという伝統的な意味で追究してい る。それに対して私のノスタルジア探求は、過ぎ去ったものにではなく、どこまでも私達を惑わすこの今という時に、そして大急ぎでこの今に取って代わろうと する未来に、その対象を求めている。この一連の作品で私は、自製のピンホールカメラを用いて自分の周囲を写し撮っている。ピンホールカメラ特有のソフト フォーカスと広い画角は、空間を歪める。空間は曲げられ引っ張られ、その結果、写真家と場、見る者と被写体それぞれの間がより隔たって見える。そこに私は デジタル処理を施し、時にはその中の諸要素を繋ぎ合わせることで、その隔たり感を更に強調している。こうして、見る者は普通にものを見る時の確固とした視 点をはずされ、方向感覚の喪失と混乱を経験し、物理的な経験から心理的に離脱することに関心が向くよう仕向けられる。このように新旧のテクノロジーをかみ 合わせていくやりかたは、このプロジェクトの概念的な問題に対応している。ピンホール写真は、場面の詳細な記録というよりもむしろ、そのロマンティックな 印象をとらえる。しかし私の作品では、その現代的テーマと画像のデジタル処理で、ピンホールカメラの持つこのロマンティックな含みがある程度抑えられてお り、また、一つのピンホール画像に詰められる限りの情報を、その際立った特質を損なわないように押し込んであるので、そこに緊張感が生み出されている。

Michelle Given
川田尚人(訳)


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