弓田 純大 写真展 第二部「鏡」

第二部 『鏡』

「扉」は滝をモチーフとした写真展であるが、私の写真のもう一つの側面である、ポートレートを中心とした第2部の展示を期 間後半に設けた。ポートレートは以前からプライベート・ワークとして撮りためていたものと、今回の展示用に撮りおろしたものが含まれている。
モ デルは撮影者が自己投影するためのメディウムである。同じモデルを別の人が撮影すれば、もちろんそのモデルの印象は全く違うものになる。モデルは自己表現 しているのではなく、「写真家がモデルの何を見ているか、どう見ているか」が写真の上に現れる。そういう意味では、あらゆるモデル写真は、撮影者のセルフ ポートレートなのかもしれない。
今回の展示用に写真を選定している中で、私は改めて自身の倒錯したビジョンを自覚した。
私 がモデルの中に見出しているのは常に「自身の死」であり、「生」も「若さ」も一過性の儚いものでしかない、ということだった。そこに現れたのは、諦観にも 似た死を自覚した自写像だった。
モデルにこのようなビジョンを自己投影していることに後ろめたさを感じるものの、この暗く破綻し た内面こそが、自分の本質であることを認めなくてはならない。
タイトルの「鏡」はその言葉どおり意味で、「自写像」を表してい る。
展示作品は全て、今はもう製造されていないポラロイドフィルムで撮影したものだけに限定した。

弓田 純大