弓田 純大 写真展 「SIDE-P」

2007年8月1日(水)〜9月1日(土) 作家略歴 オリジナルプリント

 
       
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私にとって写真は、始めたときから今に至るまで、ずっと不思議なメディアであり続けている。暗室で行われるケミカルのプロセスはとても「呪術的」であるし、時間と空間をスライスして紙上に刻印できることの不思議さは、まさに「錬金術」そのものだと思う。

そして写真の意味するところは、単なる記録を越えて重層であり、出口のない巨大な迷路である。作者はその中から自分の「真実」・「答」を見つけ、提示していく。だがそれは、同時に「疑問」も提示することでもある。その両義性が写真の特性だ。

これらの事柄だけでも、写真を扱うことは充分僕の手に余るし、とても自分の手に負える代物ではないと考えてしまう。それでも写真制作をやめられないのは、写真というメディアが内包する深遠な「謎」に惹かれてしまったからだ、としか言いようがない。

今回の展示は5月に開催した絵画展の続編にあたる。絵画と写真を同時に制作していくことでそれぞれの表現の差異を確認し、作品世界を構築していった。

多くの人がそうであるように、私もまた作品にポピュラリティを持たせたい。作品によって観る人とコミュニケーションを図りたいと思っている。しかし、鑑賞 者に対して最良のコミュニケーションを望むとき、往々にして「既成の枠内」だけではプレゼンテーションが不十分である。そういう場合、敢えて「セオ リー」、「王道」、「定石」などの「常識」の鎧を脱ぎ捨てる必要がある。とはいえ、何か特別なことをしようとしているわけではない。自分の制作はきわめて シンプルで、アカデミックで、伝統的である。

作品としての写真は一義的には個人的な問題であり、それで何かを伝えようなどおこがましい考えなのかもしれない。それでも世の中には、他者の心に触れる写真は確実に存在するのだから、私の写真も観る人の「腕に蚊が止まる」くらいの影響は与えたいと思う。

そして、「痒い」と感じさせたい。

弓田 純大


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