小部 俊裕 写真展「樹海<phase III>」

2007年4月3日(火)〜28日(土) 作家略歴

 
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この「樹海〈phase〉」のモティーフとして撮影してきた風景は、富士山の北麓に広がる森の景観です。
私はこの森に惹かれ二十数年間撮影を続け、15年前からはその近くで暮らし始めました。

実はこの森は、木々のもつ長い時間のスパンから考えればまだまだ若くて新しい森で、約800年ほど前富士山が噴火し、流れ出た溶岩流の上に植物たちが根付 いてやっとここまで成長してきた段階なのです。そういうわけでこの下の大地はまだまだ溶岩が固まったままの岩が多く、おかげで木自身も根を深く張れず直ぐ に自分の重さを支えきれなくなり倒れ、そこに微生物が繁殖し腐葉土を作ると言うサイクルを繰り返しながら、今全ての生態系が総掛かりで幼年期を生き延びよ うとしている最中なのです。

当初私は木々の作り出す空間の面白さに魅せられ撮り始めたのですが、その形にも様々な植物が作り出す様々な形態が有ることが段々分かってきました。そして それぞれの形が紡ぎ出す風景を色々な相[phase]としてとらえると、木々やその他の生き物も含めたある種のカオスに見え、こちら側になにかサインを送 り出しているように最近感じ始めています。

仏教には曼陀羅という物があります。元来は、教えを広めるためにこの宇宙を重層的な世界ととらえそれを図示した物ですが、全ての現象及び事象は無数の小宇 宙 Microcosm の集まりから出来た大宇宙 Macrocosm であるという概念から成り立っている絵なのです。そしてこの森の様々な様相を見ていると、時としてある種曼陀羅を思い起こさせることがあるのです。そうい う意味でこれらの画面の中の木々だけでなく葉っぱの一枚一枚、落ちている枯れ枝の一つ一つまでもが世界の重要な一部だと私には思われるのです。

小部俊裕

・写真 Photographic paper 508×610mm(20×24 inch)
    Image  428×539mm


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