楢橋 朝子 写真展「アフタ・フニフニ」
写真集『フニクラフニクラ』を上梓して2年が経つ。 針の穴から世界を見ていたような初期の写真から、いじわるな視線ですこし広い世界を見るようになった頃、 悪意を潜めた企みではじめたこのシリーズを纏めた時には、わずかに世界を肯定うるような気持ちが芽生えていた。 満更でもない日本の片隅、見るべき風景かどうかは分からないけれど、見ていたいと思った。 翻訳不可能な、見て直にこれはこうだと解釈できないような、判断不能に陥るような、そんな風景に出くわすと、 取りあえずシャッターを切る。あとから見返すと、ほとんどダメだが、何度見返しても分らない、判断できない写真が残る。 色めきたった風景にははじめからシャッターを切らなくなった。 これが「成熟」か「老化」かは自分でも判断できないけれど。
楢橋朝子