南 良和 写真展「秩父の原風景」(1955年〜1964年)

2005年10月29日(土)〜11月29日(火)

 
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「秩父」は埼玉県の四分の一の面積をしめる山国。
広大な面積の85.4%が山林で、東京、山梨、長野、群馬県に境を接し、農地といえるような畑はなく、斜面の劣等地である。
「耕して天にいたる」ということばどおりの傾斜地だ。

秩父に生まれ、育った私が、ふるさとの農山村を歩き始めたのは、ちょうど、その頃青年団の活動が息を吹きかえしていた頃。
当時、、長男は家を継ぐものだと言い聞かされ、小学校の高学年になると、青年団の下働きにかり出されて走りまわる。
予備軍を経て、村の共同体の一員となって迎えられる。このような通過儀礼的なことを通して村を知った。

昭和30年頃より、住む村より離れた村をたずね始めた。生まれた時から明るい電球の下で暮らしていた私は、驚きとしか言い様のない瞬間に出会った。広い土 間でランプのホヤの掃除(炎の煙がガラスにつき、そのエンを拭き取る)をしているお嫁さんに「何に使うのですが」と尋ねると、何のためらいもなく笑顔で 「まだ、この村には電気がないんですよ」と答えた。(昭和35年)

その後、何度かお邪魔した。同じ秩父でも、知らないことが沢山あることに気付き、他の村にも同じような生活空間の中で、暮らしや風習が残っているところがあるはずと考えた。
傾斜地のやや地にしがみつくようにして生きるためのクワを振るう農夫の姿を、日が落ちるのも知らず足を棒にして追った。

50年前の秩父です。

南良和


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